「タルマリーという、稀有な存在。」
最初にタルマリ―というお店について知ったのは、本だったとおもう。
もともと千葉にあった天然酵母パン屋タルマリーが、震災後に岡山に移転した。その顛末をその店主渡辺さんが書いた本だ。
本は面白かったが、正直、お店にさほど興味はわかなかった。
 
天然酵母パンか、まあ、いつか機会があれば、という程度。
それから何年かして、岡山から山を越えて鳥取県智頭町にタルマリーの工房は移った。
 
そしてビールを作り始めたと聞いた。それも天然酵母。
おっ、と思った。
同じ天然酵母でも、パンとビールは難しさが全く違う。
それはおそらく酸味との戦いになるはず。乳酸菌と酵母は付き合いの古い夫婦のようなものだから酸味だけ抑えるのは、実は難しい。特にビールは発酵時間がパンより長くなるからいかに低温で強く発酵できる酵母をみつけるかにかかってくるだろう。
ちなみに日本酒では、この酸味を抑えるのに酸をわざとはじめに少し入れて乳酸菌の動きを抑えます。また、伝統的な日本酒のキモト作りのときはまず酒母をつくる時に、、、、もうやめておきましょう。
さて4000年ほどの歴史があるとされるビール。古代のビールはもちろんすべて天然酵母だけれども、いまより低アルコールでずっと酸味があったとされてる。ホップを入れることで酸味も少しは抑えられただろうけど、今の感覚ではおいしくなかったかもしれない。
ちなみにビールの本場ベルギーには天然酵母ビールの工房が集まっている地域がある。ランビックと呼ばれるが、やはり酸味が強めに出るビール。ラガーを飲みなれた今の日本人に酸味の強い天然酵母ビールはどうだろう。サワードーのパンですら苦戦するのだから。
ーーーーーー
さて、今年6月、たまたまタルマリーを訪れる機会があった。楽しみ半分、こわさも半分程度の期待でお店に行った。
その日は工房オープンデーのようなイベント日で、店主の渡辺さんの案内で話を聞きながら工房の中を他のお客さんといっしょに見せてもらった。そういえば薪で焼ける窯が店内にあった。これ、西粟倉にほしいな。
1時間ほど見学の後、手作りのピザをつまみにビールをいただくことに。
ビールはセゾンだった。
ホップは軽め。苦みは浅いが香りがいい。アルコールも低めで夏にいくらでも飲める味。
つまり、とてもおいしかった。
酸味も弱めでコントロールされていた。いい方に裏切られた。これならチーズエクスプレスのお客さんも喜んでくれる、そう思って安心した。
「酸っぱさを抑える方法は本当にたくさん研究した。」と渡辺さんは言っていた。何も聞かなかったけど、日々の洗浄も大変だろうと思った。もしかすると渡辺さん以外の従業員にはここまでのこだわりのキープはできないんじゃないだろうか。つまり、いい意味でビジネスっぽくない、趣味レベルのこだわり。
そんなビールとパンのお店、タルマリー。
本当に稀有な存在だと思う。だから世界中からビール好きがくるお店。
こういうお店が智頭線沿いにあって本当にラッキーだし、楽しくてわくわくする。
ーーーーーー
この日の最後の方に、渡辺さんは興味深いことを言っていた。
彼と仲がいい別の職人とのことを評しながら。
「別においしいものを作ろうとしているわけではないし。」と。
つまり、それ以上に意味のある本物を作ろうとしてるのだろう。
たとえ職人を招いて作ろうとしても、マネできる店ではない。
仕事としてはやりたくない。でも、そこがいい。
こんなタルマリー、もし機会があればぜひどうぞ。工房のある旧幼稚園校舎の庭から見える風景も、なかなかいい。

タルマリーは野生酵母パンとビールのお店。

パンも瓶ビールのお持ち帰りできますし、カフェ形式でサンドイッチやピザをお店で楽しむこともできます。

森の町、鳥取県智頭町。最寄駅はJR因美線の那岐駅ですが、隣り駅の智頭駅からでももちろん行けます。https://www.talmary.com/

おすすめは智頭駅からの電気モビリティーやレンタサイクルです。

店舗情報

『タルマリー TALMARY』

鳥取県八頭郡智頭町大背214-1 TEL&FAX: 0858-71-0106

定休日:火・水曜
パン:10:00~17:00

カフェ:10:00~16:00L.O.

ピザ:11:00~14:00L.O. (休日11:00~15:00L.O.)

チーズエクスプレス事務局

岡山県英田郡西粟倉村影石1442 一般社団法人チーズ観光協会内

© 2020 Cheese Tourism Assoc, all right reserved.

  • White Instagram Icon